第 50 回 (2008-09-13 開催)
世話人: 森本 正治 氏参加者: 32 名
講演内容
金子 真 先生 (大阪大学 工学研究科)
「ダイナミックアクティブセンシングで生体眼の神秘を暴く」緑内障診断の原点は眼圧計測であるが,眼の構造的な硬さの違いが正確な眼圧測定を阻害している.筆者らは,高速カメラと空気噴流印加装置を使って非接触で眼の硬さ計測にチャレンジした.その結果,空気印加初期の段階では眼は硬く変形とともに柔らかくなるという通常の生体組織では考えられない特性が得られた.本講演ではこの謎の解き明かしからはじめ,その中で得られた新しい知見について紹介したい.
竹村 匡正 先生 (京都大学医学部附属病院 医療情報部)
「医療情報からの(言語)知識抽出および利用」医療情報学の分野では,数年前から言語処理/知識処理の研究が急激に盛んになっている.しかし,多くの場合は知識の再利用というよくわからない目的である場合が多い.今回は,医療における言語処理研究の周辺分野を踏まえながら,講演者が対象としている医療言語処理リソースの構築や,SVMなどの機械学習手法を用いた類似症例検索,インシデントレポート分析ツール等の研究を紹介する.
鍵山 善之 先生 (大阪大学 臨床医工学融合研究教育センター)
「グラフィック計算機による整形外科手術計画支援」90年代後半以降,CT撮像装置や手術ナビゲーションシステムの開発,普及に伴い,グラフィック計算機を用いた術前支援システムの研究が進められている.大阪大学大学院医学系研究科においては,人工股関節手術を対象とし,術者に代わり計算機が自動的に3次元手術計画を立案する AutoImPlanシステムが開発中である.今回の研究会発表では,こうした世界の研究動向や技術的背景も含めながら,工学研究者側の視点で計算機支援手術計画の紹介を行う.
第 49 回 (2008-06-21 開催)
世話人: 大城 理 氏参加者: 63 名
講演内容
川野 聡恭 先生 (大阪大学 基礎工学研究科)
「人工臓器開発におけるMEMS技術と非線形数理科学」当研究室で開発中の振動流型人工心臓および無電源Stand Alone埋込型人工蝸牛を例に,非線形数理解析によるCAE(Computer Aided Engineering)技術,動物実験,医工連携における研究成果の概要を紹介する.人工心臓の研究では,牛血あるいは山羊を用いた動物実験,外シャントによる新術式の提案,非構造格子による非ニュートン血液流の数値解析等を行っている.また,MEMS人工蝸牛の研究では,超微細加工技術によるプロトタイプ試作の他に,リンパ液中での基底膜振動と周波数弁別特性を,いわゆる非線形波動の局在化現象として定式化し,ベケシー進行波モデル(1960年度ノーベル生理学・医学賞受賞)の深化・理論的解明を目指している.数式使用を極力廃し,ものづくりや臨床医工学の視点から平易な解説を心がける.
土居 元紀 先生 (大阪電気通信大学 情報通信工学部)
「バイオメトリクス個人認証について」身体には指紋などのように,個人特有のパターンをもつ部分がある.それらの部分から個人特徴を抽出して照合を行うことにより個人認証を行う,「バイオメトリクス個人認証」が現在普及しつつある.指紋・網膜・虹彩・顔・手の静脈等の提示による個人認証技術について,講演者が行っている研究例も交えながら提示部位ごとに認証技術の解説を行う.
植田 慶輔 先生 (アクティブリンク株式会社)
「空気圧式ゴム人工筋を用いたパワーアシストスーツの開発および,リハビリ支援装置への応用」現在,弊社は大阪大学大学院工学研究科と共同で,人間との親和性の高い筋力補助用装置をソフトメカトロニクスの概念により,空気圧式ゴム人工筋を用いてフレームを持たない外骨格構造のパワーアシストスーツとして研究開発を行って来ています.その応用として,脳卒中片麻痺患者がセラピストの手を借りず,健常側の上肢の動作に同期して,麻痺側の他動運動訓練を行うための上肢リハビリ支援スーツというものを研究開発したので紹介します.
第 48 回 (2008-04-19 開催)
世話人: 中川 昭夫 氏参加者: 51 名
講演内容
内貴 猛 先生 (岡山理科大学 生体医工学科)
「心筋細胞の肥大と虚血耐性低下」心筋細胞の力学的負荷の増加に応じた肥大化のメカニズムを明らかにするための研究と,肥大化した心筋細胞の虚血に対する耐性が低下する(突然死が起こりやすい)原因を明らかにするための研究をご紹介します.また,時間があれば岡理大に新たに設置された生体医工学科の紹介をしたいと思います.
浅井 義之 先生 (大阪大学 臨床医工学融合研究教育センター)
「運動制御における動的安定性についてー歩行パターンの崩壊と静止立位のゆらぎー」ヒトの運動制御,特に歩行運動リズム生成に重要な役割果たすCPGと静止立位姿勢制御における動的安定性制御について考察する.パーキンソン病患者にみられる左右下肢の協調的な運動パターンの乱れを非常にシンプルなCPGモデルにおける対称性の崩壊現象との関連で考察する.また,静止立位姿勢にみられる重心動揺を動的安定性制御の視点から考察する.
中尾 恵 先生 (奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科)
「リアルタイムオーダーメイド手術シミュレーション」本研究ではオーダーメイド手術シミュレーションに関する研究開発を進めている.実測患者データから生成される三次元人体臓器モデル上で切開や変形をリアルタイムにシミュレートし,ボリューム可視化することで術前計画や術中支援への応用を目指す試みである.本発表では開発してきた医用グラフィクス,物理シミュレーションアルゴリズムと,患者個人の実測CTデータを用いて実施した幾つかのシミュレーション結果を紹介する.
第 47 回 (2007-12-15 開催)
世話人: 和田 成生 氏参加者: 45 名
講演内容
太田 淳 先生 (奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科)
「半導体集積回路技術のバイオメディカル応用」現代のエレクトロニクスを支える半導体集積回路技術をバイオメディカル分野へ応用する試みが最近行われています.本講演ではこのような試みの一つとして講演者が行っている人工視覚や脳内埋込み型チップ研究の実例についてお話をいたします.
藤川 智彦 先生 (大阪電気通信大学 医療福祉工学部)
「生体四肢の筋配列における機能的特性」本研究は二つの関節に同時に関与する生体特有の二関節筋に着目し,この二関節筋を含めた筋配列による四肢先端の機能的特性を明らかにしている.ヒト四肢の運動機構を二関節筋を含めてモデル化すると,第1関節の一対の拮抗一関節筋ペア,第2関節の拮抗一関節筋ペア,第1関節と第2関節に同時に関与する拮抗二関節筋ペアの三対6筋の駆動源となる二関節リンクモデルとなる.ここでは,この三対6筋を装備したリンクモデルにより,ヒトのような迅速かつ滑らかで正確な運動を可能にしている要因を理論的に明らかにする.
八木 雅和 先生 (大阪大学歯学部付属病院 咬合・咀嚼障害系科)
「専門家の知識・思考プロセスを実装した知的情報処理システムの研究開発」知識と経験に基づく専門家の判断処理を実現する知的情報処理システム化技術を提案します.そして,歯科領域を一例として,本システム化技術を側面位頭部レントゲン規格画像上の解剖学的計測点の認識,顔面軟組織側面像の分類,抜歯に関する最適治療計画立案という複数の問題に適用した例を紹介します.
第 46 回 (2007-09-08 開催)
世話人: 湊 小太郎 氏参加者: 63 名
講演内容
古荘 純次 先生 (大阪大学 工学研究科)
「メカトロ二クス技術を用いた上肢・下肢リハビリ支援システムの研究開発」上肢リハビリ支援システム「仁王」,「EMUL」(NEDOプロジェクト),「セラフィ」(NEDOプロジェクト,愛知万博で展示),「PLEMO」の研究開発,およびインテリジェント義足,MR流体を用いたせん断型インテリジェント下肢装具(NEDOプロジェクト)の研究開発等について紹介します.
中村 匡徳 先生 (大阪大学 臨床医工学センター)
「臨床データに基づく左心室・大動脈の血流解析」近年の計測技術と計算技術の急速な発展により,医療において計測と計算とを補完的に組み合わせてより多くの医療情報を得ようとする試みが盛んに行われている.その1つとして,医用画像に基づいて血管形状を構成し,その内部の血流を数値計算するイメージベースト解析がある.しかしながら,実際の臨床現場で患者に"研究のための計測"を強いることは困難であり,臨床で得られるデータには質・量共に限界がある.本発表では,左心室や大動脈を中心に,このような臨床データに基づいた血流解析研究について述べる.
生駒 洋子 先生 (奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科)
「ポジトロンCT (PET) を用いた脳機能の定量評価」PETは,投与された放射性薬剤の生体内における分布および時間変化から,組織の生理学的,生化学的情報を定量的に評価することが可能であり,脳神経領域では,血流や糖代謝,神経伝達物質受容体などの測定に用いられている.本発表では,PET動態解析法について述べるとともに,疾患の病態解明に向けたPETの応用例について紹介する.
第 45 回 (2007-06-23 開催)
世話人: 吉田 敬義 氏参加者: 45 名
講演内容
森谷 敏夫 先生 (京都大学 人間・環境学研究科)
「心拍変動による自律神経解析と応用」洞房結節のリズムの解析(心拍変動)による神経性循環調節機能の分析は,冠動脈疾患,心不全,不整脈,高血圧症などの心血管系疾患の病態に対する新しいアプローチとして現在,注目を集めている.その基礎と応用例を述べる予定である.
望月 修一 先生 (大阪工業大学 工学部)
「人工臓器における新しい可視化法の開発」血液接触面を持つ人工心臓などの人工臓器では赤血球破壊(溶血)や血栓形成が大きな問題になる.これらの解決には材料の改良に加えて,人工臓器内部の流れの状態を知ることが重要である.本発表では,化学発光を利用した溶血発生位置をリアルタイムで可視化する手法,酸素消光を応用した人工心臓ポンプ内面の流速の可視化法,hyperpolarized gas MRIを用いた人工肺内部の気体の可視化法について報告する.
黒田 嘉宏 先生 (大阪大学 基礎工学研究科)
「触力覚フィードバックに基づく体感型手術シミュレーションシステム」医療安全,教育訓練を目的として,生体力学シミュレーションとバーチャルリアリティ技術を応用した体感型手術シミュレーションシステムの研究開発が進められている.そのような背景において,特に触力覚フィードバック技術とVR手術トレーニングシステムの現状について報告する.
第 44 回 (2007-04-21 開催)
世話人: 大城 理 氏参加者: 50 名
講演内容
橋本 成広 先生 (大阪工業大学 工学部)
「血液・細胞の計測」人工臓器の設計に端を発した,血栓形成,赤血球の変形,細胞の計測など,医工学分野における生体計測の工夫について紹介する.
天野 晃 先生 (京都大学 情報学研究科)
「心筋細胞モデルKYOTOモデルを用いた組織・臓器シミュレーション」京大野間らが提案している精密な心筋細胞モデルKYOTOモデルを用いた全身の循環動態や左心室の拍動シミュレーションについて紹介し,これらのモデルに細胞モデルを導入することの将来性について考察する.
中村 亨 先生 (大阪大学 臨床医工学融合研究教育センター)
「生体ゆらぎの非ガウス性とスケール普遍性」多くの生体現象には単なるノイズとは異なる“ゆらぎ”が存在する.近年,生体ゆらぎは非定常で複雑な時系列構造を持つこと,また,疾患や自律神経系機能の失調によりその特性が変化することが報告されている.本発表では,心拍変動時系列および,身体活動時系列データを通して,生体ゆらぎの長期相関性やマルチフラクタル性,増分時系列の非ガウス性などについて報告する.
第 43 回 (2006-12-09 開催)
世話人: 野村 泰伸 氏参加者: 41 名
講演内容
小林 秀敏 先生 (大阪大学大学院 基礎工学研究科)
「植物の葉や花の展開運動への力学的アプローチ」波板状に規則正しく折畳まれたブナやシデの葉、アサガオやペチュニアの合弁花の折畳み・展開様式に秘められた最適性・妥当性について、折線を考慮したベクトル解析、花弁巻込み多角錘モデル、花弁軸片持梁モデルを用いて、力学的立場から考察する。
藤原 義久 先生 (三洋電機株式会社)
「三洋電機における健康・介護分野への取り組み」三洋電機における健康・介護分野への取り組みとして、マッサージチェアなどの健康家電、睡眠センサや快眠プログラム搭載電気毛布などの快眠家電、また、介護施設向け見守り システムなどの介護支援機器などの開発事例を紹介する。
山口 哲 先生 (立命館大学 理工学部)
「針先端形状を考慮した軟性臓器の穿刺手術ナビゲーションシステムに関する研究」近年, 肝腫瘍や前立腺がんの治療法として針を患者の体外から 患部へ向けて刺入し治療を行う穿刺療法が行われているが, 医師 の意図に反して穿刺中に針が曲がって進行することがある. そこで, 本研究では臓器のような軟性組織に穿刺を行った際に針先端, 側面に生じる物理現象を解明し, 術中に的確な穿刺軌道を提示可能な 穿刺手術ナビゲーションシステムの構築を目指す. 本発表では特に 現在取り組んでいる課題を中心に紹介する.
第 42 回 (2006-09-16 開催)
世話人: 田中 正夫 氏参加者: 60 名
講演内容
和田 成生 先生 (大阪大学大学院 基礎工学研究科)
「柔軟な赤血球の流動モデルによる血流のマルチスケールシミュレーション」血液の体積の約半分は赤血球で占められており,それらの変形や配向,凝集といった挙動は,血液の流動特性に影響を及ぼすとともに,血栓の形成や溶血の発生にも深く関与していると考えられる.一方,巨視的にみれば,血液は非ニュートン流体として扱うことができる.本講演では,力学原理に基づいて赤血球の変形と流動をモデル化し,種々の流れ場における赤血球の振舞いをコンピュータシミュレーションで再現することにより,血液のマクロな流れとミクロな赤血球の流動挙動を統合する血流のマルチスケール解析の試みを紹介する.
南部 雅幸 先生 (大阪電気通信大学 医療福祉工学部医療福祉工学科)
「体表面貼付型生体計測装置の開発」日常生活中における連続的な生体計測システムとして,ウェアラブルセンサなどと呼ばれる携帯型計測システムが実用化に達している.他方,究極の目標として生体インプラント型の計測システムも研究も盛んである.これらの計測システムを臨床に導入する際,前者は使用者の積極的な意思による使用が必要で,認知症の患者等には使用が困難になるなどの問題がある.後者は,体内に何かを埋め込むということに対する忌避感があり,使用を拒絶されるという問題がある.これらの問題を解決するため,体表面に貼り付けて使用する計測システムを提案する.柔軟性がある電子回路とそれを封入する生体適合性材料によりできる限り薄く構成したセンサシステムを体表面に貼付し生体計測を行う.体表面に密着することで,より詳細な計測が可能となるとともに,回路実装上の制限が緩和されるという利点がある.これまでの試用によれば,加速度・体温などの長時間連続計測が可能であることが確認された.
原口 亮 先生 (国立循環器病センター 研究所)
「心臓不整脈シミュレーション環境の開発」我々はこれまでに心臓電気生理現象大規模シミュレーションにより致死性不整脈発生メカニズムの解明を目的とした研究を行ってきた. 今後ともより精密なシミュレーションが求められるのは言うまでもないが,その一方で患者個別の心臓の病態に応じたシミュレーションを必要に応じて即座に行える環境を整えることもまた重要である. 本発表では,シミュレーションにおける試行錯誤サイクルの短縮や患者個別のモデル適用による危険予測を目指したシステム開発の取り組みを中心に報告する.
第 41 回 (2006-06-17 開催)
世話人: 大城 理 氏参加者: 45 名
講演内容
湊 小太郎 先生 (奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科・教授)
「生命機能計測学アラカルト」奈良先端科学技術大学院大学・情報科学研究科・生命機能計測学講座は,H14年度に情報生命科学専攻の新設に伴って,情報処理と計測技術で情報科学とバイオサイエンスを橋渡しする役割を担う分野として設置された.今回は私どもの研究室で現在取り組んでいるバイオイメージングとメディカルイメージングに関する若干の研究テーマ,例えば,1)光ピンセットと遠隔細胞触診2)近接場光と細胞内アクチンフィラメント構造計測3)MR顕微鏡による拡散テンソル画像4)変形シミュレーションと大動脈弓触診5)ボリュームインタラクションと肺手術術前計画支援などについて簡単に紹介する.
紀ノ岡 正博 先生 (大阪大学大学院 基礎工学研究科物質創成専攻化学工学領域)
「移植を前提とした培養組織に対する製造工程および品質の評価」概要:培養組織を移植に使用する治療が多くなされてきた.日本においても,本医療技術を企業化し,培養組織を生産する試みがなされており,商品化までもう一歩となってきた.しかし,製造工程および品質の評価についての工学的な概念構築は依然未熟であり,今後,より一層の努力が必要である.ここでは,組織培養の事例および品質評価方法について,私たちの取り組みを中心に紹介する.
櫛引 俊宏 先生 (大阪大学大学院 工学研究科環境・エネルギー工学専攻)
「遺伝子治療のための非ウィルス性ドラッグデリバリーシステム(DDS)製剤のデザインと特性評価」本発表では,plasmid DNAなどの遺伝子発現を高めるためのゼラチンからなる非ウィルス性のドラッグデリバリーシステム(DDS)に関する研究成果を報告する.生体吸収性のカチオン化ゼラチンおよびそれからなるハイドロゲルを作製し,その物理化学的性質およびplasmid DNAとの複合体形成特性について報告する.さらに,動物疾患モデルを用いたそれらのDDS製剤としてのplasmid DNA遺伝子治療特性を報告する.